愛のメロディ


愛のメロディ。
それは、愛より生まれ愛を伝え愛で包むための唄である。
慈しみ、護り、育むための唄である。
母から生まれた幼子は、すべからくその愛を受けて健やかに育つのだ。
安らぎの眠りを導くものから、生命を育むものへ。
唄はいつでもそこにあり、そして誰に向かっても唄われるものである。
それが例え神であれオーマであれ竜であれ、このメロディは誰にでも等しく降り注ぐ。
誰かが誰かを想うとき、そこにあるのは愛である。
母が子を、父が子を、夫が妻を、妻が夫を、恋人が恋人を、友が友を、子が両親を、王が民を、民が王を。
がんばれと、たすけたいと、いとしいと、そう想うとき、そこにあるのは愛なのである。
愛のメロディとは。
高らかに空に響き渡り、時を超えて連綿と受け継がれた、誰かの優しい愛である。

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唄をうたっていると、すぅっと意識が研ぎ澄まされることがある。
ただ伝えたい想いを調べに乗せて、その唄ごと伝えたい人の心に寄り添っているような。
そんな感覚だ。
あなたが幸せでありますように。
あなたが誰かとともに生きて幸せに過ごせますように。
今はある一人の少女に向かって、ただ調べを贈る。
この世界では、誰かが誰かを助けるために命懸けになることがたくさんあるから。
私は、そんな人のそばに寄り添って、その人自身の命を救う手助けをしたいと思う。
だって、人が、皆が、お互いを想う気持ちが、こんなにも愛しい。

「あなたに、この愛のメロディを贈ります。誰が欠けても、誰かが悲しむから」

いろいろな人の想いを乗せて、せめて彼女が死ぬほど命を削ることがないようにと。

「一人じゃないから。みんなもいるから。私もいるから。私にも、背負わせて」

静かな白い空間で、少女が懸命に世界を救おうとするのが見えた気がした。
後ろからそっと包む。抱きしめる。そんなイメージ。
無理も無茶もしないでとは言えない。でもそれを助けることならできるから。

「私にできることでたすけるよ」

この唄が、あなたの助けになりますように。


文・奥羽りんく@涼州藩国 絵・時野あやの@涼州藩国